小説「月下の花」
ドレイク評定が行われた日の、正午。ガラリア・ニャムヒーとトッド・ギネスは、それぞれオーラ・バトラーに乗り込み、ミの国の王城、キロン城に向かっていた。トッドはいつもの青いドラムロで、ガラリアはというと、ビランビーに搭乗していた。青と青が、並…
翌朝、早く。ラース・ワウ大広間の玉座に、ドレイク・ルフトは鎮座した。頬杖をつくドレイクに、考え事は、たくさんあった。戦局は、容易ならざる展開を見ていた。火急的すみやかに、ミの国とラウの国連合軍を、たたかねばならない。ミの国王、ピネガン・ハ…
夜半を、とうに過ぎて。ここはラース・ワウ、灯りの消えた客室。白いシーツの上、ガラリアは、一糸まとわない裸体を、男の胸にもたげていた。男の方は、ぐうぐう、いびきをかいて、すっかり寝込んでいた。男は褐色の肌を夜陰に沈め、一方ガラリアは、その白…
「なに、聖戦士殿が、来られたと?おお、セザルもか。かような夜更けに、いかがした。」 占領下にあるキロン城で、指揮官を務めるミズル・ズロムは、通称・来賓室の窓際から、ふりむいた。この部屋は、第57章にも登場した。父の眼前に立つセザル・ズロムは…
ラース・ワウに帰還して3日目の夜。ピンク色の普段着を着こんだガラリア・ニャムヒーは、ウキウキして、お城の西隅、客間が並んでいる西棟へ行くために、庭を歩んでいた。4階建ての4階の、はじっこの客間が、機械の館を失ったゼット・ライトの、仮宿(か…
聖戦士トッド・ギネスは、初恋の女性ガラリアと、ともに暮らせる日々を、神に感謝していた。だが、彼女の心が、いつも、うわの空であること、じぶんのほうを向いてくれたとしても、それは業務上やむをえずであることを、深く、嘆いた。 「生きながら、生皮を…
ラース・ワウに、ドレイク・ルフトが帰還した。 ミの国は、形の上では、ドレイク軍が占領したが、領土のぜんぶを掌握したわけではなかった。王城のキロン城と、その周辺、首都の狭い範囲を占領したにすぎなかった。 ラウの国王、フォイゾン・ゴウの署名で、…
バーン・バニングスの実家、通称バニングス邸の火災を、近くの森林から、見守っている者がいた。牧草地の中心に建築した、自分の家を焼かれて、悔し涙をのみこんでいる、バニングス卿、そのひとである。 60代なかばになる、バーンの父は、咳きこむ妻、ハリ…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 俺「この章以降、次の第63章とか、その次の、第64章の、サブタイトルを、どうしようか、ものすごく悩んでるんだよ。いま、第66章まで、小説本編は、完成してるんだけどね。サブタイトルを考えるのが、難しいん…
バイストン・ウェルの真昼の空色に、彩度の低い青色のオーラ・バトラーが、全速力でとんでいた。ビランビーの操縦桿をにぎるバーン・バニングスには、胸騒ぎがあった。 「ラース・ワウの戦力を、前線に持ち出しすぎた。せめてドロ隊の一個師団も、残しておけ…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 原作アニメ準拠、ゼラーナがラース・ワウを襲うの巻 セ「僕らのドレイク軍、まじ、ピンチさ。」 俺「ヤバいよね、この事態は、ドレイク軍にとって。アニメ『聖戦士ダンバイン』では、ゼラーナとダンバインが、ラース…
ラース・ワウに接近していたゼラーナには、ダンバインと、マーベルのダーナ・オシーが格納してあった。操舵席のニー・ギブンは、じぶんの家、ギブンの館を、焼かれたうらみを、ドレイクの居城に、ぶつけたいばかりであった。いちど、砲撃ボタンを押そうとし…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「タイトルコールは、原作アニメ『聖戦士ダンバイン』で描かれた、ピネガン・ハンム王と、比較して、ってことさ。」 俺「そのとおり。アニメで、エレ・ハンムのお父さん、ミの国王、ピネガン・ハンムは、ドレイクの…
早朝から、ドレイク軍は、キロン城への進軍を開始した。オーラ・マシンによる空爆にくわえて、湖水にもぐって、水中からの進撃も、同時に行った。陸上からは、古典的な騎兵軍団が、ひずめをならして進軍した。 水中隊の先頭は、青いビランビーのバーン・バニ…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 俺「とにかく、いま執筆をすすめる上で、いちばん考えぬいていることは、原作アニメとは、ちがう展開にしよう、ちがう展開にしようということです。」 セ「もう相当、ちがってるさ。だいたい、ドレイク軍対ミの国の戦…
レッド・バーの砦を占領したドレイク軍は、その日のうちに、さらに北方へ進軍し、キロン城に、より近い位置へと、布陣を移動していた。その夜遅く、いままでラース・ワウにいた、領主のドレイク・ルフトと、地上人のショット・ウェポンが、この前線基地に、…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「ピネガン王は、けっきょく、なにが目的だったんだろうさ?」 俺「それは、おいおい判明するんじゃないかな。あるいは、本当に、話しがしたかっただけなのかもしれないね。」 セ「クの国出身の、7人の騎士が出て…
キロン城の来賓室に、娘を連れて入室してきたミの国王、ピネガン・ハンムは、鉄格子のはまった窓を背中にして、緑色のソファーのひとつに腰かけた。窓の外からは、夕焼けに染まる空の色が、赤々とさしこんでいた。王女エレ・ハンムは、立ったままでいた。ピ…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 俺「ゼンダ城の虜は、読んでいません。」 セ「おおっと、いつも僕が、筆者はこの本読んで、影響受けたんじゃないのかと、問いただすより、先をこされちゃったさ。」 俺「でも、映画とかマンガとかで、タイトルは知っ…
ミの国の王城、キロン城。大きな湖の湖畔にそびえたつ、大きな城だ。小高い丘の上に建てられたキロン城は、石塀が円形に、城塞を囲んでいる。石塀は高くのび、円錐形のキロン城の土台だけで、7階建ての高さをなし、内部には、兵器庫や軍属の住居などが、ひ…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「とんでもないことになったさ。筆者、あなたの筆致、完全フリーダムさ。」 俺「そうよ。原作アニメ『聖戦士ダンバイン』の設定にもしたがわず、俺以外のダンバー(ダンバインのファンのこと)の好みにも、いっさい…
そもそも、オーラ・マシンはどれも、空をとぶために設計されている。両手両足がついているオーラ・バトラー、ビランビーやドラムロは、水中は、いちおう航行は可能だ。人間のからだと同じく、オーラ・バトラーは、水に浮くから、泳いで進めばいいのだ。バー…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「まじ、危険がデンジャラスなのさ。」 俺「この章は、怖いわ。じぶんがガラリアさんだったら、って思うと、本当に怖い。先の読めない戦場の状況が、ありありと目にみえるように、表現できているかな。できてたら、…
城塞のなかへ、オーラ・バトラー昇降口のなかへと入っていった、ガラリアの赤いドラムロは、猪突猛進に、底にとどくまで落下した。ずしん。おや、この場所は。地面よりも、ずっと深いぞ。見わたすと、ドラムロが、ゆうゆうと飛び抜けられる広さのトンネルが…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「筆者はさ、この小説書きはじめたころ、オーラ・バトラー戦の描写には、消極的だったじゃんさ。」 俺「うん、そうよ。ガラリアさんをめぐる、恋愛エロドラマが書きたかったから。」 セ「でもさ、小説が、原作アニ…
赤いドラムロと、青いドラムロが、城壁の手前に到達した。葉陰に身をかくしたガラリアとトッドは、腰を低くし、フルフェイスのヘルメットをしっかりかぶり、様子をうかがっている。トッド・ギネスの右隣に、彼女が、しゃがみこんでいる。自動操縦にセットし…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「今回のキャッチコピー、即物的で、説明的なのさ。エロい部分が2ヶ所あるってさ。なにかの度合い(当社比)の星マークは、3つなのさ。」 俺「アクセス解析を、あまり見ないようにしてるんだけどね、たまーに、ち…
レッド・バーの砦、総攻撃の、朝。騎士団長バーン・バニングスへの処分通知が、届いた。ラース・ワウにいるドレイクからの指示は、こうだった。バーンは、ビランビーのパイロットとして、最前線に出よ。砦を落とすまで、帰還するな。そして指揮面からは、は…
俺=筆者ガラマニ セ=セザル・ズロム君 セ「今回のキャッチコピー、ふるってるさ。そうさ。この小説は、バーン・バニングスを、不幸のどん底にたたきおとすことで、定評があったはずさ。なのに、2013年6月19日から、連載再開してからというもの、不幸になる…
そうだ、自殺しよう。 いや、だめだ。死ぬのは、痛そうだし、こわいし、いやだ。わたしは、まだぜんぜん、死にたくない。 ブツブツゆって、現実逃避をしているバーンは、ビランビーを着地させたが、コクピットのハッチを、開けようとしない。騎士団長の到着…