ガラリアさん好き好き病ブログ版

ここは、聖戦士ダンバインのガラリア・ニャムヒーさんを 好きで好きでたまらない、不治の病にかかった管理人、 日本一のガラリア・マニア、略してガラマニのサイトです。2019年7月、元サイトから厳選した記事を当ブログに移転しました。聖戦士ダンバイン以外の記事は、リンク「新ガラマニ日誌」にあります。

第56章 オーラ・バトラー水中決戦

そもそも、オーラ・マシンはどれも、空をとぶために設計されている。両手両足がついているオーラ・バトラー、ビランビーやドラムロは、水中は、いちおう航行は可能だ。人間のからだと同じく、オーラ・バトラーは、水に浮くから、泳いで進めばいいのだ。バーン・バニングスのビランビーは、ブル・ベガーより遅れて、対岸から発進する姿を、敵に見せないために、杉林のかげで、水中にもぐった。レッド・バーの砦まで潜行し、ほんの10分で到着し、浮上し、撃って出て、ガラリアたちドラムロ部隊の、援護にはいる予定だった。

スイスイと泳いでいたビランビーを、魚雷が襲った。まさか、ミの国が、水中用の機雷を準備してくるとは!ダーナ・オシー2機、ピネガン王と、マーベル・フローズンだ。そして、ダンバインまで、泳いでやってきた。なぜ、そんな多勢が、水中で待ちかまえておられたのだろう?バーンは、ビランビーで泳ぎまわり、赤い水中要塞を、目の当たりにした。無線でミズルに、レッド・バー(赤い柵)の正体を告げて、むかいくる敵機に、剣をつき、応戦していたが、ひじょうに、苦しかった。なにが苦しいかって、オーラ・バトラーが水中で戦うためには、ひとつだけ、問題点があったからだ。

パイロットが吸うための、酸素が、足りなくなるのだ。だって、酸素ボンベなんか、積んでないものね。

「…浮上しないと、リアルに死ぬ。」

呼吸困難になっていたバーンのビランビーは、水面に出ようとした。それを、ショウ・ザマのダンバインが、足をつかんで妨害した。蹴った。よけられた。だめだ、息が。酸素が。

そこへ、赤と青のドラムロが2機、どぼんと水音高く、とびこんできた。ちょうど、青いビランビーが、空色のダンバインにつかまって、もがいているところだった。

こんどこそバーンは、誰に聞かれても恥ずかしくない内容の通信を、ガラリアに送った。

「ガラリア、息が、息ができないから…たのむ…。」

ガラリアも、トッドも、状況を把握し、2人して、ダンバインを、ガスガス蹴り倒した。ダンバインビランビーの足をはなしてしまった。バーン・バニングスは、一気に空中に飛び出て、即座に青いビランビーコクピットハッチを開き、はーっ、はーっと、酸素を体に入れた。びしょぬれのビランビーは、しばらくハッチを開いたままで飛行し、しゃべれるようになるまで、息をととのえ、ミズルに無線で報告した。

「ブル・ベガー艦長、ミズル殿。敵は、魚雷を装填しております。さらに敵は、長時間の水中航行にそなえて、コクピットに酸素をたくわえらえる、なにかを装備している模様。でなければ、息がもちません。ガラリアたちも、同様であります。」

ミズル・ズロムが応答した。

「水中のレッド・バーの砦を、落とそうと思うな。狙うは、ダーナ・オシー1号機の、ピネガン・ハンム王のみ!ブル・ベガーは、ドロ隊とともに、ナムワンと応戦し、ひきつけておく。バーンは、酸素を補給したら、水中にもどり、なるべく早く、ガラリアとトッドを連れて、空中に帰還せよ。水中では、分が悪い。水中要塞が秘密基地だった敵は、わがほうを、水のなかにひきずりこむつもりだ。」

紫色の塗装をほどこした大型艦船、ブル・ベガーの周囲には、ひゅうひゅう音をたてて、たくさんのドロが舞っている。空中では、ドレイク軍のほうが、ずっと優勢だ。ミズルの命令にしたがい、ハッチを閉じて、また水中にダイブしたビランビーだったが、バーンは、まず、あわてんぼうのガラリアに、酸素のことを教えねばと思った。

「ガラリア、聞こえるか?」

「ぶぁーん。聞ごえるぼ。」

水の中なので、スピーカーからの音声が、おかしくなっている。バーン・バニングスは、なるべく聞き取りやすいようにと、マイクに語りかけた。

「ガラリア、そのうち、酸素がなくなる!敵めらは、息が続く装置を持っているから、いつまでも水中におられるが、わがほうには、それができない!気をつけろ、わかったか。」

「ぶぁーん…。息が…。ぶぁーん…。りあるに、死ぬ…。ぼぼぼ、ぼー。」

赤いドラムロは、早くも酸欠になっていた。早ッ。ガラリアは、水中にはいってから、たぶん、なのりをあげたり、敵に怒鳴りつけたり、しゃべりすぎていたのだろう。のけぞって死にかけている、赤いドラムロの腕をつかみ、いっしょに浮上したのは、青いドラムロだった。

こんどは、赤と青のドラムロが、湖面にぷかぷか、うかびながら、あおむけの体勢で、コクピットハッチを開き、酸素を補給した。息はまだ上がっていなかったトッド・ギネスが、酸欠でリアルに死にかけていたガラリア・ニャムヒーに、説教をした。

「ばかっ!なんで、あんなに一気にしゃべりまくるんだよ。ドラムロのコクピットなんざ、パイロット1人分の空間しかないんだぞ?水中にいたら、そのうち酸欠になるのは、あたりまえだろうが。それに無線が、水中では音声が悪いから、せっかくしゃべった言葉が、どんだけむこうに聞こえてるか。おいガラリア。ほんとうに大丈夫か。」

コクピットでガラリアは、ヘルメットをぬぎ、座席に後頭部の青い髪をおしつけ、天をあおぎ、ぜいぜい、ぜいぜい、いっている。トッドに、なにか言いたそうだ。水面に浮かびながらハッチを開いているから、あんまり身をのり出すと危ないが、トッド・ギネスは、彼女を抱いてやりたかった。彼女が、白目をむきながら、こう言った。

「トッド…。私…、水のなかなんかで、死にたく…ない。どうせなら、ながめのよいところが、いい。はあ、はあ、はあ。」

「減らずぐち、たたけるんだから、大丈夫だな、ガラリアさん。」

くすっと笑ってしまったトッドに、ガラリアは言った。

「ガラリアさん、は、よせと言ったろう?行くぞ、トッド。」

ところが、ミの国は、水中戦を長引かせようとするにちがいないという、ミズル・ズロムの予想に反して、水中から、ダーナ・オシー2機と、ダンバインが、飛び出してきた。ナムワンに帰還する、ピネガン・ハンム王のダーナ・オシーを、、マーベルのダーナ・オシーと、ショウのダンバインが、援護した。今や、バーンのビランビーも、いつもどおり、空中で、相対していた。

母船ナムワンに帰還したミの国王、ピネガン・ハンムは、拡声マイクを使い、演説をはじめた。敵国の国王は、湖の周辺にいる全兵士に聞こえるよう、その若々しい声を、高らかにマイクにひびかせた。

「わたしは、ミの国王、ピネガン・ハンムである。(プワーン。←ハウリング音) ビランビーパイロットよ、ドレイク軍騎士団長、バーン・バニングスよ!よく、レッド・バーの砦を発見してくれた。砦の秘密を知られた以上、わたしは、この陣地は捨て、キロン城へ帰還することにした。」

ブル・ベガーの前面にいたバーンのビランビーは、味方機に命令した。

「ピネガン王を、キロン城に、行かせてはならぬ!全機、ナムワンに向けて攻撃準備。」

艦長ミズルも、ガラリアも、トッドも、ドロ隊も、ナムワンを包囲していた。ドレイク軍の戦力のほうが多勢で、ミの国の戦力を、凌駕しているように見えた。しかし、ピネガン王は、拡声器で、こう続けた。

「ただし、レッド・バーでは、ドレイク軍の若き戦士、お2人と、出会うことができたこと、これは収穫であった。ドラムロ2機もだ。これ、ここにある。」

キャァーッ!!悲鳴をあげたのが、ガラリア・ニャムヒーであった。

大型艦船ナムワンの甲板に、赤いドラムロが2機、捕らえられているではないか。そのとき、薄緑色の、ナムワンの塗装に、ドラムロの赤色は、映えてよく見通せたが、ミズルが気がつかなかったのは、いままではカバーして、隠してあったのだろう。そして、甲板に、2人がいるのが見えた。赤いドラムロの足もとに、ドレイク軍の薄茶色の軍服を着た、捕虜がいる。銃をつきつけられ、縛り上げられ、背中あわせに座らされている。ユリア・オストークと、セザル・ズロムが、私の友達が、ああ、どうしてこんなことに!!

「ああ、ユリア!セザル!おのれっ、ピネガン、卑怯ものめ。」

ガラリアは顔面蒼白になり、ナムワンにとびかかろうとしたが、トッドにドラムロの腕をつかまれた。息子を捕虜にされた、艦長ミズル・ズロムが、ブル・ベガーのマイクを拡声器につないで、太い声で伝えた。

「ピネガン・ハンム王に告ぐ!人質をとるとは、これはしたり。陛下は昨夜、我が軍のことを、悪辣非道と評されたが、それこそは、ミの国のやり口でありましょうぞ!」

ナムワンの拡声器が、ろうろうとひびいた。

「人質とは、表現が悪い。こちらの男女は、若いが、優秀な兵士とお見受けした。キロン城に連れ帰り、少しばかり、話しがしたいだけである。終わったら、すぐお返しするゆえ。そうであった。メカマン、ドラムロは、お返ししなさい。」

ナムワンの甲板から、無人の赤いドラムロが2機、ふうわりと落とされ、ガラリアとトッドが受け取り、ブル・ベガーの格納庫に運び込んだ。すぐにまた2機は空中にとび、ガラリアはナムワンにおしせまった。艦長ミズル・ズロムは、ブル・ベガーのマイクをにぎりしめ、ピネガンに交渉した。

「ピネガン王、人質の交代を申し出る。それがしは、ドレイク軍参謀、ミズル・ズロムだ。それがしが捕虜になるから、若い2人は、こちらにわたしてもらいたい。」

きわめて冷静な言い方だった。拡声器、対、拡声器の対話に、両陣営の兵士たちが聞き入っている。ミズル・ズロムは40代前半。ピネガン・ハンム王は、30代前半の声と推定された。ガラリアは、まだこの若き王の顔は見たことがなかった。ガラリアは、ドラムロの無線機に、甲高い声をのせた。

「私もっ、人質になる!ピネガン王、私は、ドレイク軍副団長、ガラリア・ニャムヒーである。女戦士と話しがしたいならば、私が代わりに行く。その女性をかえせ!青年も、ふたりとも、かえせっ!」

すると、ピネガン王らしき人物が、ナムワンの甲板に出てきたようで、手にはマイクを持っている。青っぽい短髪で、背のすらりと高い、青年国王だ。藍色を基調とした、地味な軍装から、質実剛健な生活ぶりがうかがわれた。

「ご立派なお申し出だが、ミズル・ズロム殿、ガラリア・ニャムヒー殿。捕虜の交代には応じられない。それに彼らは、捕虜ではない。わたしの、客だ。さあ、そのほう、味方に、挨拶をしたまえ。」

マイクを向けられたのは、聞いてすぐわかったが、

「パパーッ!助けて-っ!いやさ、いやさ、僕は、キロン城なんか、行きたくないさーっ!パパーッ、こいつら、上品ぶってるけど、むっちゃくっちゃ、ずる賢いのさ。砦の中は、オーラ・バトラー用の、落とし穴だらけだったさー!」

それ以上、マイクでしゃべるなと、ピネガン王に一喝されたらしい、セザル・ズロムから、マイクは離され、レポーターよろしく、続けて、女戦士にマイクをむけた。黄緑色の髪が肩にかかる長さの、ユリア・オストークは、湖の水で、ずぶぬれだった。彼女の声が、拡声器から、レッド・バーの湖ぜんたいに、ひびきわたった。

「虜囚のはずかしめをうけるなら、この舌、かみきるまで!ガラリアさま、おさらばです!」

彼女の親友が、泣き声をあげた。

「ユリア!だめだ、ユリア、私が助けに行くから!ユリア、死ぬな!自決は、許さぬぞ!」

毅然としたユリアの態度に、騎士道精神をゆさぶられた、ドレイク軍の全兵士たちが、口々に、わあわあ、呼びかけた。助けに行くから、待ってろ!自決なんかするなよ、ユリア!ユリアの部下であり、セザルの同僚である、ドロ隊の下級兵たちは、いてもたってもいられず、ナムワンにドロで体当たりをしようとして、騎士団長バーン・バニングスにとめられた。

ナムワンは、針路を変え、マーベルのダーナ・オシーと、ショウ・ザマのダンバインを格納し、ユリアとセザルを乗せて、北方へと帰って行った。ゼラーナの船影は、とうとう見られなかった。

ガラリア・ニャムヒーは、半狂乱になって、赤いドラムロの残り弾を、敵機に撃ち続け、当たらず、ナムワンにすがりつこうとしたが、青いドラムロのトッド・ギネスと、青いビランビーのバーン・バニングスの2機に、背中から、前から、おさえつけられた。大切な友達を、2人ともさらわれ、泣きわめくガラリアを、男性2人が、けんめいになだめた。どうしたって、あの船には、人質がいる以上、攻撃は、できない。

セザル・ズロムのことばが、印象的だった。ミの国のことを、「むちゃくちゃ、ずる賢い」と言っていた、あのことばが。ミの国は、戦巧者(いくさこうしゃ)で知られている。レッド・バーの砦は、いったい何年前から、あのような水中要塞を、かまえていたのだろうか。オーラ・シップの昇降口を、敵から見えないように、水中に築くとは、おそるべき先見の明である。そして、ガラリアたちをおびきよせた、地下トンネルの罠。ユリアとセザルを、まんまと捕らえた、オーラ・バトラー用の、落とし穴。捕らえた兵士が、有能な人材と見るや、人質とする、変わり身のはやさ。追撃を封じるために、人質にマイクでしゃべらせ、ドレイク軍陣営を精神的に追い込むという、念の入れよう。


ミの国は、強敵だ。ガラリアは、バーンは、はたして、勝てるのだろうか。捕らえられたユリアと、セザルは、いったいどうなるのだろうか。ミの国の首都、キロン城で待ち受ける試練とは、いったい、どんな戦いなのだろうか。戦雲が、ガラリアをよぶ。

 

2013年8月13日