紗柚枕さん作 フランス映画のヒロインなガラリアさん
モノクロのスクリーン。雨音が聞こえる。中世かな?古い、苔むしたお城の、中庭で。
ふと立ち止まった、短髪のマドモアゼル。
ぼくはまだ、彼女の顔を知らない。いま、初めて見たのだもの。後ろ姿の彼女を。
こっちを向いてって、ぼくが、心の中で思ったら。彼女は、ぼくがここにいるのを、知っていたんだ!
振り返ったんだ、ぼくを、戸惑うだけの、ぼくを。
彼女の垂れ目が、ぼくを見つめた。ぽったりとふくらんだ、目の下辺。
濃い睫毛が、アレクサンドリアの宝石に、しずくを落とした。
ね、君は、ガラリアさんという名だね。ぼく、会う前から、君の名を知っていたんだ!
だって、雨が。雨のしずくが、しとしとと、ぼくを濡らしたから。
この雨は、君が流した、心の涙なのだろう?
2005年7月2日