ガラリアさん好き好き病ブログ版

ここは、聖戦士ダンバインのガラリア・ニャムヒーさんを 好きで好きでたまらない、不治の病にかかった管理人、 日本一のガラリア・マニア、略してガラマニのサイトです。2019年7月、元サイトから厳選した記事を当ブログに移転しました。聖戦士ダンバイン以外の記事は、リンク「新ガラマニ日誌」にあります。

「リーンの翼」 第5話「東京湾」感想文

重い内容でしたね。俺は泣いたよ。「リーンの翼」見て、涙ぐんだのは、第5話が始めてだ。

オーラマシンもろともに、オーラロードを浮上してゆく、バイストン・ウェルの人々と、地上人たち。東京湾に現れた、オーラバトルシップ群。リュクスとアマルガン隊、ホウジョウ国の女王コドール隊、そして朗利と金本たちは、東京湾上で戦争を始めてしまう。

一方、エイサップ鈴木と、サコミズ王の二人は、ナナジンとオウカオーに搭乗したまま、他のみんなとは別ルートをたどる。オーラロード内で、タイムスリップしてしまうのだ。俺はタイムスリップ設定には、驚かなかったが、タイムスリップ先には、非常に驚いた。太平洋戦争中の日本に、行ってしまうとは!サコミズ王、いやさ迫水真次郎は、元特攻兵であり、本作の主人公エイサップ鈴木は、現代日本青年である。そうか…俺は、「リーンの翼」の製作意図を思い知らされて、激しく心臓を、揺さぶられた。

1945年、東京大空襲。これを目の当たりにした、エイサップ鈴木は、その「惨状」に驚くよりも、迫水真次郎が、怒りにふるえ泣き出したのを見て、驚いていた。

鈴「泣いている。」

ボケラッとクチ開けて、こう言った鈴木くん。彼は、迫水の涙を見て、ようやく、目の前にある光景が「惨状」だと理解したようなのだ。この、描写が、まったく、なんてこった…見事だ!鈴木くんは、「首都・東京が爆撃され、炎上している光景」を見ても、それがほんとうに起こっていることだとは、実感として=痛みとして分からず、身近なひと、サコミズ王の感情の爆発を見て、ようやく分かったのだ。日本は戦争をしていたという事実を、B29に日本人を殺されている現実を!悲しみのあまり、激昂する迫水真次郎。

迫「赤ん坊も老人もいる!戦場ではないんだぞ!」

彼の叫びに、鈴木くんも、俺も…心うたれた。呆然とした。なにを見せたいのだ?太平洋戦争をか。人の業をか。なにが業で、なにが大切なのか、この「リーンの翼」は、何を訴えるのかッ!畳み掛けて、彼らの前に現れたのは。

鈴「あれは、厳島神社…ハッ!」

厳島神社上空にナナジン

厳島神社上空にナナジン 2005年9月28日 ガラマニ撮影

 

目まぐるしく変わる、鈴木くんの視界。関東平野上空にいた、ナナジンとオウカオーは、中国地方上空へとやって来たようだ。空とぶ鈴木くんから、厳島神社の赤い鳥居が見えたと分かり、次に描かれるであろう史実が想像されて、鳥肌が立ったね。まさか…とんで来るあれは、米軍機。どこかで見た機体…そうだ、資料館で見たんだ。

広島だ!今いるのは、広島市上空。現在時刻、1945年8月6日8時15分だ。ぼとり、と投下される、ぴかり、と光る、大きな一つの爆弾。その瞬間、彼が叫んだ。迫水ではない、エイサップ鈴木が叫んだ!

鈴「リトルボーイはダメだーッ!」

原爆投下を、阻止しようと、思わずナナジンで手を出してしまうエイサップ鈴木。ああ、なんという純粋な正義感だ。エイサップ鈴木というヘンテコな名の、「リーンの翼」というロボットアニメのヒーローは、なんて、ああ、なんて、かっこいいのだろうか。俺はかつて、こんなにかっこいいヒーローを見たことがない。「ロボットアニメの戦闘シーン」で、こんなに胸をしめつけられたことはない。

故郷・岩国を、バイストン・ウェルの艦船に強襲された第1話。以来ずっと、自分がなすべきことはなにか?と、迷い迷っていたエイサップ鈴木は、目の前で、広島に落とされる原子爆弾を、必死にとめようとした。ナナジンごと吹き飛ぶかもとか、死ぬかも…という気がはたらく間もなく、彼は、そうせずにはおられなかったのだ。そして、彼が、そういう気持ちになったのは、さっき、燃える東京を我が目で見たからだ!元・特攻兵、迫水真次郎が、号泣するのを見たからだ!

エイサップ鈴木は、バイストン・ウェルで、戦闘服を身にまとっても、オーラバトラーに搭乗しても、「戦争をしている」という実感がなかったのだと思う。でも、今はちがう。エイサップ鈴木は、本気で戦う気持ちになった。その気持ちとは、太平洋戦争中、日本国を、故郷を家族を守らんと、命をかけた日本男児の気持ちと同じではないか?さよう、戦争はそれ自体、愚行である。命は一つも無駄に死なせてはいけない。でも、ではない、だから…だ。彼は、とめたかったのだ。広島に原爆を落とさせるのを、許せなかったのだ…!

1945年広島市上空にナナジン

広島原爆ドーム 2005年9月28日 ガラマニ撮影

 

しかしだな。広島のシーンに及んで、「原爆はダメだ」ではなく、「リトルボーイはダメだ」と言わせてしまう、富野節のセンスには、いろんな意味で脱帽するわ。そりゃ、リトルボーイという呼び名は有名だしさ、エイサップが口にしてもエエけどさ。言うか?普通?ウン普通じゃないんだな。これが富野節なんだな。

さて、太平洋戦争中の日本で、原爆相手に、自分の命を投げ出して、ひとの命を守ろうとしているエイサップ鈴木。ひきかえ、現代の東京上空で、笑いながら暴れまくっているのが、朗利と金本だ。エイサップと同じ現代青年である二人は、「メカのちから」をタダでもらい、虎の威をかる狐となる。オーラ・バトラーというおもちゃを操るクソガキが、東京を破壊するのである。

俺は、朗利と金本は、好きなキャラだった。第5話冒頭で、オーラロードから東京へと浮上した朗利が、はぐれた朋友を探して、

朗「かなもとーッ!」

と、悲痛な声をあげたときには、「キャー♪」であったが、そんな俺の婦女子的感情は、見事にくつがえされた。いかに好きなキャラであれ、彼らの蛮行には俺、目を覆いたくなったね。これが、富野監督の狙いだったと分かったときには、「ファンの期待を裏切る感動」とはこのことか、さすがだぜと、頭がクラクラしたね。美形で、威勢のよい男二人、朗利と金本がだな、こんなバカガキであったのかと、がっかりさせる展開に、驚嘆した。朗利の言うことがすごい。

朗「金本ぉーっ!日本人の平和ボケを覚まさせるんだ!」

ボケてるのは、おまいだよ朗利。オーラ・バトラーで楽しそうに、市街地を壊すとは…おまえは、それでも反米活動家か。そうか、反米は口だけか。おまえがやりたかったのは、ただ暴力をふるうことだったのか。し、しかも。派手さが目につく今作のオーラ・バトラー中、わりかし渋めな機体に乗りながら、つまりリアリティあるマシンに乗って言うことが、

朗「ダブルディスバァーッチ!」

なんだその必殺技名は。必殺技名なんて言いそうにないリーンの朗利が、急に技名を言い出すとはな。おまえはベジータか。ダブルディスバッチ(うっ…ダサ…)は、朗利と金本が協力してくりだす、たいした工夫も見られないワザなんだけども、こんなマヌケな必殺技で、ぶん切られたのが、東京タワーですよ。中にいた、罪もないおおぜいの観光客は死んでしまったことだろう。政治的建造物ではない東京タワーを、そんな動機で、こんなバカどもに壊され、殺され…

ろうり、かなもとよ。おまえら、まちがってるよ。どうせなら、都庁の7階あたりをぶった斬れば痛快なのになーって思った俺も、人として少しまちがっておるがの。

金「朗利!オーラパワーってさ、これ馬力あるよ!」

馬力の問題か、金本!かなもと、俺はな、お前のことはな、学問的科学的達観的なやつだと思って、期待していたが、失望させられたぞ。ひとの心情に感性が及ばない、機械にんげんだったのか、キミは。

それとだな。「オーラパワー」って、なんだね、金本くん。別シーンでは「オーラエネルギー」と言ってたし、前回、第4話では「オーラエナジー」と言ってたじゃないか。初代バイストン・ウェル物語「聖戦士ダンバイン」と同じ、「オーラちから」でいいんじゃないのか。そうでなければ、「オーラなんとか」は、どれかに統一したまえ。毎度、用語の表現が違うんじゃ、せっかくの異世界設定が生かされないぞ。

それで金本は、東京は地方出身者が集まったうんぬんかんぬんだから、だから破壊してもいいみたいなことをぬかし、きゃつの言い分はよく分からんかったが、脚本の意図するところは、実によく分かった。機械を得たことで増長し暴走する、若い世代の愚かしさの象徴が、朗利と金本だったのだ。

場面変わって、エイサップ鈴木と、迫水真次郎が目撃する、過去、日本が体験した戦争の事実。海岸を埋め尽くす米軍艦船、砲撃される、島…島だと?この海岸は、どこかで、見た…ついこないだ、見た…

沖縄戦だ!これは、ここは、摩文仁だ。鉄の暴風に襲われる、ああ、俺が見てきた、あの沖縄じゃないかッ!

参考:ガラマニ日誌35 沖縄旅行記(1)慰霊の日・平和祈念公園

沖縄戦を、「リーンの翼」が描いてくれたことに、いたく感激した。俺はリーン第5話配信日の直前に、そこに行ってきたんだよ。なんというめぐり合わせだろうか。

見よ、圧倒的武力をもって沖縄を攻撃する米軍に、オウカオーで立ち向かう、迫水真次郎の雄姿を!胸がすく思いと、胸がしめつけられる思いだ。エイサップが、広島で原爆を阻止しようとしたときには、「手を出すこと、歴史を変えることはできない。」と言っていた迫水が、かつて、自らが特攻死出来なかった沖縄戦を前にし、抗戦せずにはおられなかったのだ。雄叫びあげ、もう我慢ならんと、米軍を叩く、オウカオー!オォーッ!

ああ、海軍指令部壕が、「リーンの翼」の絵で、描かれているよ。沖縄県豊見城市にあるここにも、俺は、行ってきたばかりなんだ。

 

沖縄海軍司令部豪入り口の階段

海軍指令本部壕入り口 2006年6月29日 ガラマニ撮影

 

大田実海軍少将は、かの有名な電文、「沖縄県民、かく戦えり。県民に対し、後世、特別のご高配をたまわらんことを。」を残し、この壕で自決した。作中でその史実が描かれた直後、迫水真次郎の怒号に俺は、仰天しそして、涙した。

迫「そんなことでー!日本国を、狂わせたか!」

これは、戦争体験者からの、現代のわれわれに贈られる、血のメッセージだ。なんて素晴らしい番組だろう。これはテレビで全国放送すべきだよ。

迫「沖縄に背をむけなければならない、悲しさ、無念さ。それを分かれ!鈴木くん!」

大戦を生きた迫水真次郎と、現代青年たち。双方に厳然とある、愚かしさと正義感を、対比し描き出す。愚かしさ=正義感なのかもしれぬと。時代が変われども、変わらぬ人間像を映し出す。それが「リーンの翼」なのだね。

富野監督は、広島・長崎の日と、敗戦記念日のある8月に照準を合わせ、この作品を世に送り出したのだ。作者の訴えることが、痛いほどに理解させられた、第5話だった。観る者に、このような「不快感」を与えることの出来る作品は、多くない。富野由悠季ならではの仕事だ。そう、「リーンの翼」という作品は、語の正しい意味での、反戦映画なのだ。

最終回「桜花嵐」に、期待します。配信日が延期しているようだけど、時間はいくらかかってもいいですから、いい作品を作って下さい。

2006年9月3日(日)