ガラリアさん好き好き病ブログ版

ここは、聖戦士ダンバインのガラリア・ニャムヒーさんを 好きで好きでたまらない、不治の病にかかった管理人、 日本一のガラリア・マニア、略してガラマニのサイトです。2019年7月、元サイトから厳選した記事を当ブログに移転しました。聖戦士ダンバイン以外の記事は、リンク「新ガラマニ日誌」にあります。

第50章 いつわりのかがり火

暗くなってから。バーン・バニングスが、幹部級の兵士たちに、招集をかけた。板張りの床、屋敷の大広間が、作戦本部である。全員、大きな木製テーブルを囲んで、腰かけている。机の上には、羊皮紙の周辺地図。

集合した人員は、騎士団長バーン・バニングス、一日遅れで参加した、副団長ガラリア・ニャムヒー、青いドラムロを愛用する聖戦士トッド・ギネス。ブル・ベガー艦長、ミズル・ズロム。そして、機械の館のあるじ、ゼット・ライト。

ユリア・オストーク下士官や、セザル・ズロム下級兵たちも、同じ部屋に集合していたが、彼らは直立し、整列している。

バーン・バニングスの当初の思惑では、レッド・バーの砦など、1日で落とせるはずだった。ドロ隊を数十機投入して、集中砲火をあびせれば、充分だと思っていた。ところが。

ダーナ・オシーが、出てきたのだ。」

ざわめいたガラリアとトッド、遅れて到着した2人を制し、バーンは報告を続けた。

「ゼラーナのダーナ・オシーではない。ミの国は、独自にオーラ・バトラーを製作しているが、特にギブン家の工房から、ダーナ・オシーや、その他オーラ・マシンの設計図が渡された。レッド・バーの砦を守るダーナ・オシーは、機体性能もさることながら、パイロットの腕がよいのだ。」

すると、やけに自信に満ちて、こほんと咳をしてから、落ちつきはらったハスキーボイスで、発言をしたのが、機械の館のあるじ、ゼット・ライトであった。

「バーン殿。それは、充分に予想できたことでしょう。我が軍が開発するオーラ・マシンや設計図は、我が軍のためのみならず、主として輸出用に、製作してきたのですから。」

そうなのだ。ドレイク・ルフトが国力を増した要因は、軍事侵攻によるものではない。他国への侵略は、ミの国戦が、はじめてなのだ。ルフト家の繁栄の源は、一重に、オーラ・マシンの生産、輸出、技術提供、これらによる財政収入なのだ。

続いて、ミズル・ズロムが発言した。

「ミの国は、有能な軍人が多いことで知られておる。オーラ・マシンがあり、優秀なパイロットがいて、不思議でない。それは予想して叩いたが、ミの国のダーナ・オシーが、手強く、苦戦した。ドロ隊では、らちがあかず、ドラムロも3機、投入した。しかし…」

バーン・バニングスが続けた。

「そこで、2機めのダーナ・オシーが姿をあらわしたのだ。ガラリア、トッド殿。これは、マーベル・フローズンだった。」

天井をつくような甲高い声で、副団長ガラリアが叫んだ。

「ではっ!やはり、レッド・バーには、ゼラーナがいたのだな!バーン、討ったのか、ゼラーナを。ダンバインは?」

「まだ、ゼラーナの機体は、確認されていない。ダンバインもだ。しかし、ダーナ・オシー2機をくりだされて、我が軍が、撹乱(かくらん)された点は、いなめない。」

現状報告をするバーン・バニングスに向かって、ちっ!と、舌打ちし、小馬鹿にしたように、トッド・ギネスが批判をあたえた。いつもは陽気なはずの、彼の口調が、非常にいらだっていた。

「だらしねえなあ。こんだけの大隊を率いて。バーン、ビランビーで出たんだろ?ダーナ・オシー2機ぐらい、なんとかならなかったのかよ。」

目をふせ、バーンは答えた。ビランビーは温存していたと。聖戦士トッドは、らしくなく、怒りをあらわにし、バーンに食ってかかった。

「ドロ隊に、損害が出てるんだぞ。負傷者がいるんだ!不幸中の幸いで、戦死者はまだいないが、あんたがビランビーを出し惜しんだせいで、けが人を出したんだい。」

バーンは言い返せず、こくんと首を縦にふり、謝罪の意志を、整列する下級兵たちに向けた。そんなバーンの様子を、ドロ隊で出陣したセザル・ズロムは、切れ長の目を、もっと細めて、観察していた。

「…であるから、聖戦士殿に、ご出陣願った…。では、明日の総攻撃について、作戦を練る。皆のもの、忌憚のない意見を出すがいい。下士官たちも、遠慮はいらぬ。意見あらば、挙手せよ。」

 


2時間強、作戦会議を行い、明日の段取りを決めたが、夜襲があることも充分考えられるので、基地は、厳戒態勢で、夜をすごしていた。トッド・ギネスは、いても立ってもおられず、ガラリアをさがしたが、会議室を出たとたん、彼女は、姿をくらましてしまっていた。勘のいいトッドは、彼女の様子が、妙なことに、気がついた。

「ガラリアは、基地に到着してから、やけに生き生きとしている。まあ、謹慎処分がとけて、本来の軍務にもどれたんだから、とうぜんかもしれんが…。」

トッド・ギネスは、ユリア・オストークの野営地を訪れ、ガラリアを見ないかと尋ねたが、ユリアですら、わからないと答える。ちなみに、セザル・ズロムをふくむ下級兵数名は、湖岸の先、最前線の斥候に出ていた。

ガラリアを、今すぐにでもつかまえて、抱きしめて、愛の言葉の雨をふらせたいトッドだったが、当人がいないのでは、手も足も出ない。おかしい。胸騒ぎがした。もしかして彼女は…!金髪の青年は、基地で最大の建物に設置された、機械の館へと、駆けだした。

機械の館に来てみたが、あるじが不在である。ゼット・ライトは、部下に、用事で出かけるが、すぐもどると言って出たという。トッドの胸騒ぎが、高ぶった。脳天に血がのぼった。持ち前の勘で、寸刻を争う事態であることを、見抜いた。

周辺一帯を覆っている、杉林が、あやしい。あそこは葉陰が厚く、人目から隠れやすい。懐中電灯をつかんだトッド・ギネスは、躍起になって、ゼット・ライトとガラリアが、しけこんでいると思われる場所を、探し回った。真っ暗な林間を歩きながら、悲観におちいった。しかし、こんなことをして、何になるのだろう?もしも、男女がもつれあってる現場を、俺がおさえたとして、いやなものを見てしまって、心を痛めるのは、俺だけじゃねえか。

腕から力がぬけて、懐中電灯を地面に落とした。ひろい上げた。トッドは、こんなことはやめようと決心し、来た道を、トボトボ、もどっていった。夜は暗く、覆う闇は、トッド・ギネスの心の闇を、嘲笑するかのごとく、彼のしゃくにさわった。

すると、闇の彼方に、だいだい色の炎が、ぼうっと音をたてて、ともされた。戦場の夜を守る、かがり火だ。炎で照らし出された機械の館まで、もどってみたら、手前の広場に、明るい笑顔を、こぼれんばかりにかがやかせたガラリアがおり、ゼット・ライトと、ユリア・オストークと、3人で、談笑しているではないか。かがり火が、彼らの背後で、ぱちぱち音をたてて、燃え上がっている。

なにやってんだ、あいつら…? トッドは、いぶかしんで、すぐには駆けよらなかった。ガラリアが、無邪気に、彼を呼びとめた。

「トッド!聖戦士どの、どうかこちらへ。お話ししたき議がある。」

不承不承、トッド・ギネスは、ガラリアの言うことなら聞いてやってもいいという体(てい)で、かがり火までやって来た。ユリアも、なにかいいことがあったにちがいない、笑顔をたたえて、

「トッド・ギネスさま。さきほどわたくしの野営地にいらっして、ガラリアさまを尋ねられた後、すぐにガラリアさまが、わたくしを呼びにこられたのです。行きちがいになられたのですわ。それで、ガラリアさまが、大事な戦(いくさ)の前ですので、大事なことを、みなさまにお伝えしたいと、おっしゃるのです。」

トッドは、かがり火に照らされて、青色のショートヘアがつややかに光り、俺の手でなでられることを、ねだっているガラリアの頭頂部を見つめ、動悸を速くした。恋だ、恋…典型的な恋だ。これが、俺の初恋なんだ。何度もトッドは、胸の中で、繰り返していた。意中の女性、ガラリアは、ソプラノを高く、このように、演説をした。

「みなの者、仕事の手を休め、しばし聞いてもらいたい。私の、ひじょうに個人的なことであるが、みなの団結力が、なにより重要な折りであるから、改めて申し伝える。」

野営の兵士たちが、注目した。トッド・ギネスは、いやな予感がした。満面の笑顔をたたえたガラリア・ニャムヒーは、ゼット・ライトのとなりに立ち、ろうろうと話した。

「先だって私は、機械の館のあるじ、ゼット・ライト殿に、多大なご迷惑をおかけしたことを、謝罪したく思う。ゼット殿は、地上に御正室がおられ、そのため、私との交際を辞退された。まっとうな理由と思う。私、ガラリア・ニャムヒーは、ゼット・ライト殿を許し、改めて、機械の館のあるじどのを、ご尊敬すると、ここに表明する。我が軍に欠かせぬおかた、ゼット・ライト殿に。偉大なる、地上人の技術主任殿に、敬礼をささげよ!」

歓声をあげたのが、まずユリアだった。なんて素晴らしい、ガラリア様、なんて寛容な!とかなんとか、ほめちぎった。そこらにいた兵士たちも、へえ、こりゃ殊勝なこったと、副団長にうながされる通りに、敬礼をした。

実際、攻撃の主力部隊を率いるガラリアと、後方支援部隊の長(おさ)であるゼット・ライトが、気まずいままでは、戦が、うまくはこぶはずもない。おおやけに、手うち式をしたガラリアの判断は、ただしいと、みなはそう感じた。にぎにぎしく、歓談しはじめた、ガラリアと、ユリアと、そして、尊大な微笑を浮かべたゼット・ライトを、

ただ1人、トッド・ギネスだけが、にらみつけていた。

阿漕なやりかただ!!

口には出さなかったが、恋した女にむけて、怒りの刃を向けていた。

うそをつけ!わかってるぞ。おまえたちは、そうやって、仲直りをし、仕事仲間にもどったふりをして、誰にも知られないところで、ちちくりあうつもりでいるんだろう!ガラリア、おまえのその饒舌な舌を、見ればわかる。ゼット・ライト、きさまが会議のとき、とつぜん自信をとりもどしていたから、おかしいと思ってたんだ!

声をたてて笑い合う、かがり火の人々に、ひとり背を向けて、初恋に苦しむトッド・ギネスは、足早に遠ざかっていった。

許さない、ぜったい許さない!ガラリア、おまえは、誰にも渡さない。彼女に、指一本触れてみろ。ゼット・ライト、きさまを…あの杉の木に、吊してやる!ニガーめ!!

 

 

2013年7月31日