西城美希さん 最初のインタビュー記事
『アニメック vol.29』昭和58(1983)年4月1日ラポート刊 、39ページ、西城美希さんのインタビュー記事より(以下引用・原文ママ)
ガラリアをはじめて見た印象というと、やっぱり「女なのに戦闘シーンが多くてカッコイイ」というイメージですね。女ってもともとカワイイ声じゃないし、そのままでやってたんですけど、見たかんじでやはり「男っぽく」作ってしまうんですよ。ところが「ガラリアは見たかんじはああでも実はカワイイ女なんだから、カワイクやってくれ」といわれたんです。「ガラリアという人が実はカワイイ人だということが声で出されなければいけない」ということでした。(中略)絵の方のお芝居でガラリアが腰に手をあてて色っぽいポーズを作りますけど、そういった場面でも、「色っぽく、とかあまり意識しないで素直にやって。ガラリアはかわいいんだから」といわれるんですよ。
二文目の冒頭、「女ってもともとカワイイ声じゃないし」の「女」部分は、「私」の誤植ではなかろうかと推測します。「私」にすると、意味がスンナリ通じます。
アニメ雑誌『アニメック』のこの号は、「聖戦士ダンバイン」第1話の放送時期に発行されているもので、西城美希さんのインタビュー記事としては、最も古いものだと思われます。どうです!ガラリアさん=西城さんが、雑誌に初登場の時点で、こんなに「カワイイ」「かわいい」って、連呼されちゃってるんですよ!ガラリアさんの、あのプリティーな、あの奇跡のボイスは、実は、天然なのではなくて(いや、天然も入ってるかなブツブツ)、意図して、かわいらしく演じられているのだということが分かる、貴重な記事です。
西城さんに、これらの演技指導を直接つけたのが、富野由悠季総監督なのか、藤野貞義録音監督なのかは、この記事からは判明しませんが、いずれにせよ、製作者が、ガラリアというキャラクターを、丁寧にていねいに、扱っていたこと、人格を深く描こうとしていたことが、うかがい知れます。西城さんは、最初、職業が戦士で、短髪で、気が強そうな容貌のガラリアを見て、ボーイッシュに演じてみた。でも、それではあかんとダメ出しされただなんて。
「ガラリアという人が実はカワイイ人だということが声で出されなければいけない」
ですってよ!なんて心ときめく演技指導でしょうか。この一言に、ガラリアさんの魅力が、凝縮されているといっても、過言ではありますまい。『アニメック』は、この号以降も、声優さんや、作画監督さんなどへのインタビューを多く掲載しており、資料的価値が非常に高い。作品研究は、現場にいる人の意見から考察しようという編集方針にも、好感が持てます。雑誌記者さんの、作品への熱意が感じられる、素晴らしい内容になっています。
一方、同時期に出されたアニメ雑誌 『月刊OUT 6月号』昭和58(1983)年6月1日 みのり書房刊 の、「点検特集聖戦士ダンバイン」と標題された中の、ガラリアさん解説記事(15ページ)は、今、手元にありますがね、何十回読んでも、本、ひきちぎりたくなりますね。引用すると、我がサイトが腐るような気がするので、載せません。この記事書いた記者は、トッドについてもリムルについても、マーベルについても、人格をくそみそに評し、しかもぜんぜん妥当じゃないんだなこれが。まじめに作品研究をしようとしてるとは、到底思えない記事です。「サンライズの看板番組だし、カラーで特集しとくか」的な、杜撰な印象を受けます。
俺自身、編集の仕事をしたことがあります。ですから、当時のアニメ雑誌の記者は、単なる「出版社の社員」であって、アニメ番組が好きなわけではない、アニメの部署に配属されたから、仕事で記事書いてるんだという事情は、分かります。しかし、『月刊OUT6月号』のこれは、同誌におけるダンバインの初めての記事で、しかも巻頭特集であるのに、やっつけ仕事な感がいなめないのは、甚だ残念です。いや、はっきり言わせてもらえば、「ふざけるな。」です。
こと、ダンバインに関して言えば、『アニメック』が、真摯に、作品研究に取り組んでいるのに対して、『月刊OUT6月号』の特集記事は、セル画をながめてサラリーマンがダベっているのを文章化しただけです。記録性も資料性も低く、評論としても見るべきものがない。この時期、『月刊OUT』の興味は他の作品に集中しており、ダンバインは二の次だったせいもあるでしょうが…とにかく、ガラリアさんの人物像を、うすっぺらにテキトーに悪し様に書きなぐった罪は、重い。俺は、これを主張したくて、理論武装するために大学行ったといっても、過言ではないぐらい、根に持っております。
2006年5月23日